今回はアマゾンプライムビデオの配信で鑑賞した、2024年公開の長編アニメーション映画「Flow」の感想考察です。(※一部ネタバレあります)
第97回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した本作は、黒猫を主人公に、登場するキャラクターはすべて動物。セリフは鳴き声だけで、後は少し雄大な音楽が加わり観客を
癒しの世界に引き込みます。
制作はラトビア・フランス・ベルギーの共同。製作費はわずか350万ユーロという低予算ながら、繊細な映像と大胆な演出で国際的評価を得た一本です。今回は、感想とあわせて、この世界観を少しだけ考察していきます。

あらすじ
人間がいなくなった?終末世界。森で暮らす黒猫は、ある日大勢の鹿が目の前を走り去った後に、洪水と水位上昇により、水没に巻き込まれる。
黒猫はボートに乗り旅をしながらも、犬やカピバラ、鳥(ヘビクイワシ)、猿(ワオキツネザル)たちと出会い、触れ合っていく。
ポイント①:動物たちの世界で
黒猫は孤独な生活をしていて、森でいきなり犬たちに追いかけられます。猫たちの疾走感と、風、草が揺れるようすが、ダイナミックかつ柔らかいという不思議な映像。
最初は草原がどこかペラペラで薄っぺらく見えたのですが、次第に風に揺れる音や動きを感じ、その草原のにおいまで想像するような気持ちになりました。画面越しに風が頬をかすめるような、不思議な没入感があります。
その中にダイナミックに黒猫が駆けていき、犬たちが必死で追いかけていく姿も、カメラはアップでスピード感があり、躍動感があります。
(3Dのゲームっぽい映像と手書きっぽいリアル感のある質感の融合、柔らかい温度で、癒される世界観ですね)
ポイント②:仲間と旅
黒猫は謎の水位上昇、森の水没により困惑しますが、何故か浮かんでいる木の船に乗り込みます。ここから旅をしていくわけですね。
そこには静かなカピパラがいます。そして途中に好奇心旺盛なワオキツネザル、気品がある孤高のヘビクイワシ、懐きやすい犬が加わります。
(なんか冒険漫画の仲間集めみたいだなとバラバラな動物たちを見て思う・・・)
目の動きや、表情全体、距離の取り方、ビビり方などで、セリフなしでその動物たちの性格が静かに伝わってきます。
途中から擬人化というか、すごい人間っぽい助けようとか、誰かのためにという感情で行動を取ったりします。しかし、アニメと神話的な雰囲気とファンタジーも溶け合い、特に違和感なく黒猫たちの感情に寄り添えます。
ポイント③:この世界で人間はどうなったのか?

黒猫たちが乗っているペンキの剥げた木っぽい船(金属も付いています)と、途中で石で出来ているっぽい質感の建物(ローマぐらい?)が出てきます。
(なんか、冒険物みたいでドキドキしますね。動物たちが滅んだ人間の秘密を解き明かす!みたいな感じで)
ただ違和感があるのは、船と建物の時代がずれていることですね。おそらく建物は過去の遺物。船は最近まで人間が使っていたものということですね。
そして人工物があるのに、人間は全く出ていません。
では人間はやはり、黒猫が巻き込まれた突然の水位上昇と洪水により、滅んでしまったのかなと。それを人間以外の動物の視点からみるのが、この映画の独自性となっている。
(そうすると黒猫たちの乗っている船はノアの箱舟ですかね)
ここまで考察しましたが、世界観を細かく解き明かすよりも、滅びの気配と静かな旅路の雰囲気をそのまま静かに浸る方が、この作品の魅力を感じやすいと思います。
まとめ
本作「Flow」は黒猫たちが崩壊した不思議な世界を船で冒険していく、ファンタジーアニメーション。
黒猫たちの次第に結ばれていく仲間意識や、感情を表情と行動だけで温かく感じさせる。喋っていなくても感情表現は豊な作品となっています。
映像では、森のざわめき、水の飲みこまれた感覚や、冷たさ、クジラの雄大さが印象的。
終末的世界と、動物たちの希望の世界を組み合わせた世界観の独自性が高い。
そして、台詞なしで、観客に想像させるスタイルも余韻があり、心地よい。
人間の滅んだ世界を人間が動物の視点で見ているという不思議な感覚と、温かい感情溢れる映像の合わせ方が上手い作品です。
作品情報
監督 ギンツ・ジルバロディス
制作国 ラトビア、フランス、ベルギー
公開年 2024年
時間 84分
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「ソング・オブ・ザ・シー」:これは人間が主人公ですが、妖精など神話的な要素が強いファンタジーアニメ作品。癒される映画としてはレベル高いです。
