今回はU-NEXTの配信で鑑賞した、1965年のフランス映画「サンタクロースの眼は青い レストア版」の感想評価です。(※一部ネタバレ含みます)
ゴダールが「男性・女性」の未使用フィルムを渡して、ユスターシュ監督がボイスオーバーして制作したと言われているムービー。というわけで低予算制作の47分のモノクロ短編映画になりました。
若者の悲しさを日常の転調から描き出した良作。展開も少なく、まあまあ難しめですが、60年代のフランスの雰囲気を味わえるとてもいい映画です。
現代では知名度低めの監督ですが、2023年からのジャン・ユスターシュ映画祭や、レストア版のDVD発売などで、ユスターシュ監督が再注目されているのかなと。
本作の思った感想とちょっとした解説を書いていきます。
あらすじ
フランスの地方都市ヌルボンヌに住むダニエルは、本屋の万引きやアルバイトで生活している貧乏な青年。
ある日、サンタクロースの格好で街の通行人と写真を撮るバイトを数日間することになる。
ポイント①:サンタクロースはやりたい放題?
ダニエルは孤独で自信過剰な若者。ダッフルコートを買うためにお金を欲しがっています。そしてカメラは寒風にさらされた灰色の舗道や、人々の硬い視線を通して、夢のない現実を映す。
バイトでサンタクロースの格好をしていると基本自分だと相手がわからないことにダニエルは気づく。自分が特別視されることで、優越感に少し浸っているのかなと感じました。
撮影時に女性の身体に触れても咎められない――そのことが、彼に一時的な万能感を与えているように見えます。
(怒られないからといってやりすぎでは・・・?)
ポイント②:サンタクロースという匿名性
サンタクロースの格好の時に会う約束をした女性と待ち合わせ時間に出会うダニエル。
しかし、ダニエルだと思わなかったと女性に拒絶されます。
(ダニエルは無理やり触ろうとするし、観ていてめちゃくちゃ悲しい・・・というか現代だったらやりすぎで非難されそう)
ダニエルはサンタの格好の時は皆が集まってくれていたのに、普段の自分だと相手にされないことに絶望を感じます。
普段は虚勢を張って滑稽に生き、貧乏でも自信があったダニエルの心が大きく揺らぐ様子をリアリティを持って映し出します。
総論:若者の現実を観察者の眼で映す
本作「サンタクロースの眼は青い」は恵まれない若者が虚勢を張って生きた中で起こる心の揺れを笑うでもなく寄り添うでもなく、フラットな目線から見守るドラマ映画。
物語に大きな山場はなく、静かに内面を映し出す作品です。エンタメ性は控えめですが、映画的な魅力と深みはしっかりと備わっています。質が高く低予算とかは全く気になりません。
また、会話からもダニエルや若者たちの苦悩や虚勢などが漏れているので注目すると面白い。
サンタクロースという夢の象徴を転機として、現実が哀愁に変わるという悲劇性を抱えています。
正直、ダニエルが痛々しく、人生の苦みに溢れている。
始めはユーモアのある軽めのトーンでダニエルのアホな生活を内面的な声を出し描いていますが、終盤に向かって少しだけ暗く、重々しい雰囲気になるのもダニエルの気持ちを表しているのかなと。
(簡単に短くまとめると、自信あったのに!貧乏!もてない!泣・・・という映画です。しかし映し方、技術が素晴らしい)
貧乏で、もてない男たちが、どうしようもなく現実の街を行進していく、そんな一本。
作品情報
公開年 1965年
制作国 フランス
時間 47分
監督 ジャン・ユスターシュ
出演 ジャン=ピエール・レオ、ジェラール・ツィメルマン、アンリ・マルティネーズほか
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