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映画『サマーゴースト』感想評価|映像美と静けさが染みる、幽霊と少年たちの花火

今回はU-NEXTの配信で鑑賞した、2021年の短編アニメ映画「サマーゴースト」の感想評価です。(※一部ネタバレあります)

 

若者たちの悩みと、幽霊の出会いが交差する、40分の幻想的な青春アニメーション。

夏を感じさせる情景、花火、空、水の漂うような美しい映像と、ひんやりする雰囲気が気持ちいい。静かな感動が、深い感情を呼び起こすような作品。

本作を静かに、ゆったりと感想を書いていきます。

あらすじ

 

高校生の杉崎友也、春川あおい、小林涼はネットにより知り合い、都市伝説となっている高校生の幽霊『サマーゴースト』が現れる飛行場跡地に向かう。

 

ポイント①:幽霊少女、佐藤絢音

 

昔の閉鎖された飛行場で手花火をすれば幽霊が現れるという。広がった風景、夜に虫の声が響く中、三人が諦めかけた時、友也の花火が一瞬止まり、火花が派手に散る。

(火花が止まり、遠景から一気に寄る視点の変化が、印象的でゾクっと痺れました)

ひゅっと冷たい風が流れ、黒い服着た佐藤絢音という幽霊が現れる。

 

絢音の声優は川栄李奈だが、冷静で感情を抑えた、大人っぽい声が絢音に凄く合っていて感動的。絢音さんの若い幽霊なのに落ち着いた、冷たさと温かさを持つキャラデザインが完璧ですね。

(最初全く川栄李奈だと気付きませんでした。ハマり役です)

 

ポイント②:若者の悩みと人生

 

絢音と三人の思いが交差していく。友也、あおい、涼はそれぞれの抱える傷や痛みが幽霊との出会いで浮かび上がる。

 

幻想的な展開から、病気や学校での立場など、それぞれの青春の悩み葛藤を現実的に織り込む構成が印象的。

監督なりの今を生きる若者への静かなエールなのかなと感じました。

 

ポイント③:監督loundrawの作家性

 

ストーリーや演出としては内省的な、静かな漏れ出る気持ちを描くのが上手いですね。

新海誠監督よりも、空や水の映像は抑えめで、観客の心に寄り添うような温かい映像が特徴的。

 

また、今回は短編なのもあって、登場人物の背景や過去の話を数十秒のカットで想像させる。

余白、観客の頭の中でキャラの気持ちを考えさせる演出が光りますね。

また、小瀬村晶のピアノが中心の優しい音楽が、生と死の境界の静けさ、空を飛ぶ浮遊感を表している。全体を包みこむような旋律に癒される。

 

まとめ:空の壮大さと水の深い重さが伝わるアニメーション

本作「サマーゴースト」は青春の悩み、葛藤を幽霊との出会いから幻想的に呼び起こした青春映画。

 

とても美しい風景や、水中の表現、広がる空の情景、そして壮大な音楽が物語に華を添え、心を揺さぶる。限定的な時間、ひと夏の出会いの貴重さにドキドキする。

 

解放感があり、レベルの高い映像に癒されると思います。静かな温かい気持ちの話です。(ただ厳しい過去や現在の問題は痛い)

 

40分間が静かにゆっくりと流れる。魂を自由に軽やかにしてくれるような作品かなと。

 

作品情報

公開年 2021年

監督  loundraw

声優  小林千晃、川栄李奈島崎信長など 

時間  40分

制作国 日本

 

関連おすすめ映画

・『秒速5センチメートル』(2007):新海誠監督の情景と二人の関係を静かに描く短編アニメ映画。雪、桜、空などの美しい映像と、切ない思いと限られた時間、余白余韻を十分に感じられる作品。

 

・『ブルーサーマル』:かなり雰囲気は明るく本作とは対照的に若者の成長と葛藤を描き出す。空の魅力と恋、主人公の成長が感じ取られて気持ちいい作品。

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