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映画実写「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」感想考察|懐かさが溢れるあの頃の夏

今回はU-NEXTの配信で鑑賞した1995年の日本映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の感想評価です。(※一部ネタバレあり)

 

最初は1993年に短編テレビドラマとして制作されたらしいですが、後に評価が高く映画として編集、上映されたようです。また、2017年にアニメ映画としてリメイクされています。

 

夏の暑い日に、テレビの前でリラックスして見るにはもってこいの、懐かしさで心が和む雰囲気と、50分の短い時間。そんな本作をゆったりと紹介していきます。

 

 

あらすじ

 

舞台は海辺の田舎の町の小学校。典道と祐介は友達で二人とも同級生のなずなに好意を抱いていた。

実は両親の離婚により、なずなは転校することになるが、二人には黙っている。そんな夏の日に、典道と祐介はなずなの前で水泳対決をする。

 

ポイント①:一瞬の青春

 

典道と祐介は水泳で勝ったら、なずなに告白するとか約束して競走する。

ここで、典道はターンの時に足をぶつけて負けてしまうわけですね。

 

典道が遅れ、祐介が勝って水から上がるとき、映像は祐介の下からの視点になります。

空のカラッとした綺麗さと、アップで上からなずなが覗き込み、「一緒に花火を見よう」と誘われる。

 

余計な演出や音楽はなく、本当に貴重な青春の一瞬の煌めきを切り取り、懐かしさを閉じ込めたような映像にドキッとします。なずな役の奥菜恵の大人っぽい、感情がにじむ演技が素晴らしい。

 

ポイント②:ifパート

 

どうやら、もともとドラマの企画で決まっていたようですが、本作は二つの結末で構成されています。

水泳で典道が勝ったパターンと、祐介が勝ったパターンです。

祐介勝ちパターンでは、祐介がなずなの誘いをビビってしまい、なずなは母親に無理やり連れていかれます。

 

典道勝ちパターンでは、なんと駆け落ちをする流れになります。

SF的に、一瞬の転機で、ここまで物語が変わるというのは面白いですね。

 

ポイント③:小学生に戻ったような懐かしさ

 

祐介と典道のアホみたいな会話のやりとりや、夏の小学校のプールの雰囲気。

これを淡い映像で、ゆったりとしたテンポで映している。

 

また、小学生の友達たちが集まるシーンでは、子ども達の目線からアップで撮られていたり、まるでその中に自分が入っているような錯覚を覚えました。

かなりノスタルジックな、タイムスリップしたような気持ちになり驚きます。

(筆者がこの映画と世代が近いからかもしれませんが、おそらく最近の子どもにも響くはず・・・)

 

ポイント④:なずなの心情は?

 

なずなは大人っぽいですが、繊細で子どもながらに孤独を感じている。

この夏の一瞬を生きたいという思いが、駆け落ちだったり、大胆な行動に現れ、この時間の大切さを感じさせます。

なずなが浴衣から黒いワンピースに着替えて、「大人に見えるかな?」と典道に聞くところ。

恐らくですが、なずなはこの大切な儚い夏が今日終わってしまうという悲しさと、誰かにしっかりみてもらいたいという揺れる気持ちがあったんじゃないかなと。

 

だから駆け落ちなんて、非現実的なことを考えだしたのかもしれませんね。

(小学生で駆け落ちはさすがに無理か)

 

まとめ:ぜひ、夏の映画の一本に

 

本作「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は美しい映像で、少年たちの夏の一日をゆったりと情緒豊かに描いた作品。

 

個人的に夏の映画といえば「サマーウォーズ」なんですが、この作品も一緒に夏の映画として繰り返し何度も見たいなと思いました。時間も50分というのが、丁度いい。

 

典道となずながバスに揺られるシーンや、夜のプールではしゃぐシーンなど見どころと美しい映像が随所にあります。もちろん、花火のシーンも。

小学生の夏の一瞬に引き戻されるような、そんなタイムマシンのような一本ですね。

 

作品情報

公開年 1995年

制作国 日本

時間  50分

監督  岩井俊二

出演  山崎裕太、奥菜恵など

 

関連おすすめ映画

・『時をかける少女』(2006):細田守監督のアニメ映画。もどってこない日と、切なさが深い。SF要素も強い。実写版と原作小説もおすすめです。

・「Love Leter」(1995):岩井俊二監督の代表作ですね。同じ名前の昔の同級生にまつわる不思議な交流と愛を描いた名作です。