今回は2022年の青春コメディ映画「ファニー・ページ」の感想評価です。(※一部ネタバレあります)
尖った作品で最近勢いがあるA24の制作です。この作品もかなり挑戦的で、映画脚本の原則を否定する、アンチエンタメ、メッセージ性のある作品ですね。
本作の感想を率直に書いていきます。(一応解説もしながら・・・)

あらすじ
漫画店で働く、高校生ロバートは下品なセクシャル表現に満ちた独特な漫画を描いていたが、恩師の死により作家の道を目指すために、高校を中退し家出をする。
そして地下アパートの劣悪な環境で奇妙な中年男性たちと暮らし始める。弁護人の元で記録係として仕事しているうちに、かつての漫画関係者のウォレスと出会い、指導を受けようとする。
ポイント①:夢を追う若者の現実とは?
主人公はバカげた漫画に熱中する作家を夢見る若者、ロバート。自意識過剰で、自分勝手。
恩師や友達はロバートの才能を称え、恩師が交通事故で亡くなるという衝撃的な始まり。
(ここから、ロバートの覚醒とかを期待するはず・・・)
しかし、ロバートが家出して拠点としたのは、才能があるとは到底思えない(ごめんなさい)中年男性たちの不潔で、空気が生暖かい、地下のアパート。そして、一部屋に謎の同居人あり。
それでも夢を追って、この場所で漫画を描く。
(不思議の国のアリスも地下に落ちますが、ロバートはチェシャ猫もいない、夢の残骸が集合したような劣悪な環境に自分から落ちている・・・)
ポイント②:漫画の師匠登場?
やっぱり、作家の覚醒といえば特徴的な才能溢れる師匠ですよね。
・・・もちろん、本作でも登場します。
漫画の絵に昔関わっていたウォレスとロバートは運命的?な出会いを果たします。
しかし、ウォレスはただ関わっていただけで天才ではなく、指導者としても愛も技術もない、自分勝手な男。
簡単に天才の指導者が出現しないという、本当に現実的で破滅的な流れに。
総論:夢のような才能、レベルアップはない
本作「ファニー・ページ」は夢を追う若者を装飾なく、現実的に捉えた青春コメディ。
ここにはヒーローも、ファンタジーもありません。(地下アパートは残骸の蒸し風呂地獄みたいな場所だけど)そして奇人しかでません・・・
ラストはめちゃくちゃな展開の挙句の果てに、ロバートが働いている漫画店のカウンターに座り、呆然と佇むシーンで終わります。
普通の映画なら味わう、主人公の成長やカタルシスはここには全くないので、かなり観ていてきつい。ロバートの若気の至り、才能の過信を、思わず過去の自分に重ねてしまう。
そして監督の、ロバートに対する視線は厳しくなく、温かくもなく、黙って寄り添う距離感が新しい。
全く成長のない主人公、盛り上げを拒むカオス展開、それでも夢を追う若者の現実をしっかりと映した青春映画の意欲作でした。
作品情報
2022年 / アメリカ / 86分
監督:オーウェン・クライン
出演:ダニエル・ゾルガードリ、マイルズ・エマニュエル、マシュー・マーほか
(ちなみにu-nextで鑑賞)
↓(参考:公式サイト)