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映画『国宝』感想評価|吉沢亮×横浜流星が挑む、人生を捧げる芸の極致

今回はイオンシネマで鑑賞した、吉沢亮主演の映画「国宝」の感想評価です。(※一部ネタバレあり)

 


公開から日にちも経ち、「まあ、人気らしいし」という非常に軽い気持ちで映画館へ向かいました。(主演も知らない・・・)

まさかの客席はほとんど満席。これが、とんでもない芸の道を極める熱い作品・・・!

 


見てない方には、是非劇場に行って欲しいですね。

映画を見て感じたこと、心を揺さぶられた瞬間をがっつり、主観的に書いていきます。

神の領域に近いような、芸術の頂に挑む、二人の男の話。

 


あらすじ

 


任侠の父を亡くした喜久雄(吉沢亮)は、歌舞伎界の名門当主・花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、その息子・俊介(横浜流星)とともに、女形としての芸を叩き込まれていく。

やがて二人は成長し、それぞれの覚悟と情熱を胸に、芸の道を歩み出す――。

 


ポイント①:歌舞伎は血筋という呪縛

大人になった喜久雄は半二郎に認められ、代役を任せられる。

俊介の息子なのに任せてもらえない悔しさ。喜久雄の半二郎の血筋ではない者が代役を演じる恐怖と緊張。

 


その弱さに共感し、俊介と喜久雄両方に自分を重ねてしまう。

 


喜久雄は「最後は血筋が勝つ」という言葉に激怒しつつ、代役本番前に「俊介の血を飲みたい」と俊介に言い、目が恐怖に満たされる。

才能を食い潰す化け物がそこにいるように思えて、背筋がゾクっとする。

 

ポイント②:芸の頂へ


中盤で最も印象的だったのは、喜久雄が芸者・藤駒との隠し子の娘と神社でお参りをする場面。

 


娘が「何を願ったの?」と無邪気に聞くと、喜久雄は「芸を磨くために悪魔と契約したんや」と、冷たい声で、ゆったりと答える。

喜久雄の芸に取りつかれた執着と、心の闇が顔をみせる。凍るような冷たさが怖い。

 


その後、喜久雄は俊介の立場を奪ったと言われ、スキャンダルもあり転落し、宴会の余興として稼いでいく身になる。

 


宴会の後、ボロボロになった喜久雄が誰に捧げるわけでもなく屋上で一人で舞う。

亡霊のような、儚げな舞が、絶望と失望を全身に纏う。美しさと儚さが合わさる、素晴らしい名シーン。

 


総論:鬼気迫る芸の道を極めた男

本作「国宝」は歌舞伎の女形の世界に身を投じた男達の執念の軌跡を描いた美と気迫の極致の名作。

 


喜久雄の気迫もそうだが、俊介の命を賭けて舞台に立つ魂が熱い。二人がまた巡り合う時、そこに全ての芸の道がある気がした。吉沢亮横浜流星の歌舞伎の演技は美しく、執念を感じさせる。

 


ラスト、再び成長した娘と出会い、憎いと言われつつ「本当に芸の道を極めたんやねえ」と優しく声をかけられるところで、喜久雄が救われた気がして涙が自然と出ました。

 


今年見た映画でも一位候補です。芸の極致と激情、まさに頂の景色を描いた名作。おすすめです。

映画館を出ても、万感の思いというか、幸福感がずっと全身を包む映像体験でした。

 

作品情報

2025年/175分/日本

監督 李相日

出演 吉沢亮横浜流星渡辺謙高畑充希など