今回はNetflixで鑑賞した2024年の実写化映画「はたらく細胞」の感想評価ですね。(※一部ネタバレ含みます)
漫画アニメ人気により実写化された本作。赤血球、白血球が主人公という独自性、映像表現としての手腕が問われる難題。
今回は徹底考察版ということで、何が良かったか悪かったか考えました。
(これは・・・昔、原作の漫画アニメが好きだったのにも関わらず、実写版の上映には見向きもしなかった裏切者の感想レビューである・・・)
あらすじ
細胞内で酸素を運ぶ赤血球(永野芽郁)は異物を排除する白血球(佐藤健)や他の37兆個もの細胞たちと一緒に元気に働いていた。
高校生の日胡(芦田愛菜)は父・茂(阿部サダヲ)と二人暮らしだが、健康に毎日を送っているのは、体内の細胞たちの必死の戦いによるものだった・・・
ポイント①:細胞の擬人化という実写化の難易度
原作「はたらく細胞」は体内の赤血球たちの働きを擬人化し、親しみやすく面白可笑しく描いた独自性の高い作品ですね。
インフルエンザなどの悪い菌の退治されるところ、マクロファージ、NK細胞やTキラー細胞などの一般には知名度の低い細胞動き方をわかりやすく見せてくれています。
もちろん恋愛やギャグ漫画よりも実写難易度はマックスレベルに高い。
ですが、その原作の緩いテンポや、作品の温度感、アクション、舞台・衣装はこれ以上ないほど実写化として高水準。
(どうしてもコスプレ感は否めないけど)
佐藤健の無表情から滲む感情、永野芽衣のドジで優しい演技も満点。
ポイント②: 感情を宿せるか──細胞という主人公の限界と可能性
漫画版との変更点として、人間側の映像が加えられている。
デメリットとしては、視点が変わる点。細胞側の視点、人間側の視点、さらに日胡と茂の体内の細胞で分けていたため、3つの場面がコロコロと変わりすぎて難しいかなと。
でも娘の健康を願い、支える父。その想いに応えるかのように働く細胞たち。父の思いと、細胞が戦ってくれているという感動は強い。
もし、もう一歩感動を深めるとすれば、赤血球が“日胡という少女”に対して、無意識の共鳴や感情があっても良かったかもしれない。
彼女の笑顔のために酸素を運ぶ。日胡の感情きっかけで覚醒するなど、感情のリンクがあれば、物語に人間味が宿った気がする。
(原作改変でファンから炎上する可能性もありますが)
ポイント③:⚔ アクションとドラマ、どちらを取るか
佐藤健のアクションは見事。まるで「るろうに剣心」の舞台を体内に移植したかのような、迫力と流麗さ。CGとの融合もよく、戦闘シーンは文句なし。
しかし、アクションの密度が高い分だけ、細胞たちの内面や関係性のドラマに“間”がなく、観客が感情を重ねる力が少ないと思うのでドラマ面の補強が必要かなと。
ポイント④:最も“映画らしい”場面──大便!!
特筆すべきは、「翔んで埼玉」の武内英樹監督らしい“異様なユーモア”。
茂の便意が限界を迎えたシーン。体内では20人くらいのお相撲さんたちが肛門の筋肉を支え、爆発的な解放を全力で阻止する。
ここにはバカバカしさと、加藤諒(巻き込まれる赤血球)のコメディ感が最高に汗臭くアホっぽい。
細胞たちが命をかけて防ごうとするその姿が、滑稽で、切なく、どこか神々しい。
まとめ
本作「はたらく細胞」は体内の細胞の働きを擬人化することで、その働きのドラマ性を訴えかける意欲作。
映画としては、体はいつも支えているぞという、人間の応援映画かなと。
日胡の笑顔のためにはたらく、細胞が生き生きと命を繋ぐ物語に、拍手を送りたい。
作品情報
監督 武内英樹 |制作国 日本
公開 2024年 |時間 109分
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