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映画「この心が知っている」感想評価|心臓が変わったとき、心もまた静かに再生する

今回は2025年のアルゼンチン制作のNetflix、ヒューマンドラマ映画「この心が知っている」の感想評価ですね。(※一部ネタバレ含みます)

 

心臓が移植された時--人は感情、記憶が変わるのだろか・・・あなたはどう思いますか?

(・・・科学的ではない?そんなことは知りません・・・・)

 

心臓移植、心臓の元の持ち主の意志・嗜好が移植者に移るという異色のSF?ヒューマンドラマですね。

 

アルゼンチンから届いた、小さな命の再生譚。
派手な展開も、大きな音楽もありません。
けれど観終わったあと、あなたの“胸の奥”に、静かに何かが灯っているはずです。

 

© Netflix 

 あらすじ

 

合理的な建築会社の社長フアン・マヌエルは、心臓発作により生死の淵をさまよう。
彼を救ったのは、故郷の町で誠実に生きていた男・ペドロの心臓だった。

 

命は救われた。
だが、フアンは気づく。──自分の中に“知らない何か”が流れ始めている。

 

音楽の趣味、味覚、感情の揺れ。それは自分のものなのか、それとも誰かの“残響”なのか。

 

フアンは、ペドロが生きた町を訪れる。
そこにいたのは、ペドロの妻ヴァレリアとその息子、かつての仲間たち。
見知らぬ人々とのふれあいの中で、フアンの“心”はゆっくりと温かく変わっていく。

 

ポイント①:フアンの変貌

 

フアンは心臓移植後、別人のように人生を歩みはじめる。

ペドロの地元で、無償で診察所の建設を手伝い、社会奉仕の心に目覚める。

 

利益優先に社長として働く姿とは、ほど遠く、生き生きと自分の人生を歩んでいるように見える。自らの人生を見つめ直す映画は多いが、全く異なる理由でフアンは変貌する。

 

特にフアンの「利益よりも社会的道義が大切だ」と力説する台詞が変化を印象づける。

 

その、ペドロの友人たちやヴァレリアや息子に対する言葉かけや、その目線の優しさで、フアンの変化を優しく描く、演出演技が温かい。

(他にも息子を心配する表情、行動に大きく表れている)

 

ポイント②:ペドロとフアン

 

このフアンは別人のようだが、フアンの人格は死んでしまったのだろうかという疑問がある。(またはペドロの心臓に魂、感情は存在するのかという問題)

 

筆者の見解としては、フアンとペドロの魂が共鳴し、融合した中で新たなフアンが生まれたと感じる。

 

兄弟に対する返答や、その優しさと複雑さが合わさる態度、感情は以前のフアンから考えられず、かといって昔のフアンの人格や才能が死んだ訳ではない。

 

(この解釈が正しいかどうかは、読者の皆さんの想像にお任せします・・・)

 

総論:心が変わるということ

 

『この心が知っている』は、心臓移植によって変わっていく男の心を、過剰な説明を避けながら、丁寧に描いた作品。

 

フアンの心の中を明確にセリフとするものは少なく、視線や沈黙、間で観客に考えさせる余白の多い、感じることを大切にする。

(「Don’t think. Feel.」??)

 

特にラストはフアンとヴァレリアの心が通い合うようなカタルシス、余韻を感じる良シーン。演技が情感たっぷりで満足。

 

 

この映画には、明確な答えも、語りすぎるセリフもない。
でも、心のどこかがじんわりと揺れる。観終わった後に、観客がこの心を知っていると感じる、小さな鼓動の物語。

 

作品情報

 

監督 マルコス・カルネヴァーレ

時間 89分  |   2025/アルゼンチン 

出演 ベンジャミン・ビクーニャ、フリエタ・ディアス

 

参考サイト(公式サイト、Filmarks)

 

「この心が知っている」:Netflix公式サイト

「この心が知っている」 | Filmarks映画

 

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