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映画「いつかの君にもわかること」感想

今回はu-nextで鑑賞した、ジェームズ・ノートン主演、2020年のヒューマンドラマ「いつかの君にもわかること」の感想・評価です。(※一部ネタバレ含みます)

 

鑑賞後に胸につまるような、言葉にできない温かい感情で包まれる良作です。

シングルファザー、病気など深刻な状況ながらも温かい思いが体に染み込むような作品ですね。セリフで語ることは少なく、目線や表情が繊細。

 

監督は「おみおくりの作法」のウベルト・パゾリーニ  

 

あらすじ

 

シングルファーザーのジョン(ジェームズ・ノートン)は、終末期の病を患い、4歳の息子マイケル(ダニエル・ラモント)の新しい家族を探している。

 

職業は窓拭き。質素な日常だが、ジョンは息子に愛情を注ぎ、どの家族なら「マイケルにふさわしい未来を与えられるか」と模索する。

 

次々に見学する里親候補の家々。だが、“正解”はどこにもない。限りある時間の中で、ジョンは何を伝え、何を残せるのか——。

 

ポイント①:死があるからこそ生が際立つ

 

ある日里親探しの日々の中、マイケルは木の下で死んでいる虫を見つけ、「もう歩かないの?」とジョンに聞く。

 

ジョンは「死んだ生き物は動物でも植物でも動かなくなるんだ」と答える。

マイケルが「悲しいこと?」とジョンが「もうそこにいないだけ」と言うシーン。

 

声のトーンや目線の下げ方、言い方から滲み出る、息子への思いだけでも、ジーンと感動する。

 

余計な演出、音楽を加えず、静かな時の中で演技をする二人に役の魂が降りているような錯覚さえ感じるような名シーン。

 

ポイント②:ジェームズ・ノートンの演技

 

子どもの里親を探すという困難な役だが、ジェイムズ・ノートンが苛立ちや悲しみ、焦りを自然に演じているのが、この映画にピッタリとハマる。

 

仲のいい親子を目で追ってしまうシーンや、マイケルを優しく見つめる目など、静かな感情を演じるのが抜群に上手い。

 

総論:語られない感情

 

本作「いつかの君にもわかること」は喪失・死という暗い雰囲気を持ちながらも、温かく優しい感情が根底に流れているヒューマンドラマ。

 

ジェームズ・ノートンの目線、表情での感情の醸し出し方は勿論素晴らしいが、マイケル役のダニエル・ラモントの4歳ながらの父の感情を察するような、そして直接には出さない賢い演技が光る。

さらりと、ジョンに「”ようし”ってなあに?」とさらりと聞く気持ちの揺れを出すのが上手い。

 

語られない感情、思いが映画の核をなし、その思いが観客にじんわりと伝わる演出が最高。

物語りの余白、余韻が素晴らしい、近年のヒューマンドラマの良作。

 

・作品情報  
原題:Nowhere Special  (いつかの君にもわかること)
監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ  
出演:ジェームズ・ノートン、ダニエル・ラモント  
制作国:イタリア・ルーマニア・イギリス合作  
公開:2020年|上映時間:96分|

 

(予告動画、公式サイト)

いつかの君にもわかること | キノフィルムズ

https://www.youtube.com/watch?v=0usgRGPgLM4&t=152s

 

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