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「アセスメント~愛を試す7日間~」映画感想

今回紹介するのは、アマゾンプライムで鑑賞した2025年のドイツSF映画『アセスメント ~愛を試す7日間~』。(※本記事は一部ネタバレを含みます)

 


舞台は、資源が枯渇し、出産が国家の審査制になった近未来。夫婦が“親”としてふさわしいかを試されるという、斬新かつ不穏な設定が話題を呼んでいる作品です。

 

限られた空間の中で繰り広げられる心理劇。演技、設定、美術、すべてが高水準でまとまり、深く記憶に残る。

 

 

◆ あらすじ

植物や水などの資源が乏しくなった未来、人々は子どもを作るために政府の“査定”を受ける義務がある。

 

子どもを望むミア(エリザベス・オルセン)とアーリャン(ヒーメッシュ・パテル)は、7日間に及ぶ試験に挑む。査定を担当するのは、政府の職員・ヴァージニア(アリシア・ヴィカンダー)。

 

徐々に明らかになる難問の数々、この査定は本当に子育ての適性を見るものなのか?それともー--

 


 見どころ①:狂気の査定人・ヴァージニア

 

査定官ヴァージニアは、初日は整った身なりと落ち着いた口調で現れます。

 

ところが、2日目以降、彼女は一変。子どものように無邪気な笑顔で部屋を荒らし、夫婦を混乱と不安に落とす。

彼女の行動、表情は一見、幼児そのもの。しかしその裏には、不気味な知性と目的が透けて見える――。

 

アリシア・ヴィカンダーの演技は圧巻。理性と狂気を自在に行き来し、"大人の身体に閉じ込められた子ども"のような狂った存在感をリアルに表現し、映画の空気感を完全に支配している。

 

観る人にとっても不気味で、感情をかき乱され、目を離せない存在。

 

 


 見どころ②:出産に“許可”が必要な近未来

 

本作の世界では、資源不足の影響で出産が国によって制限されています。この設定は、現代の少子化や環境問題ともリンクし、現実味があって受け入れやすいかなと。

 

トゥモロー・ワールド』など過去のSF作品でも似た発想はありますが、本作では「国家による愛情の査定」という点が特徴的で、人間の内面に迫ってくるいい設定。

 

また、バーチャルペットに置き換えられていくペット文化の描写も示唆的で、命の価値について監督のメッセージを感じる。

 

 


◆ 総評:設定×演技×演出、すべてが噛み合った異色の良作

 

『アセスメント ~愛を試す7日間~』は、奇抜な設定だけで終わらず、キャストの現実味のある演技、緻密な美術、冷たい未来感を徹底した演出が三位一体となった完成度の高いSF映画

 

特にヴィカンダー演じるヴァージニアの「二面性の狂気」による怪演が、この物語を単なるSF映画から、ホラーやサスペンスのような緊張感を伴う予測不可能な物語へと変えているのが凄いところ。

 

冷たい空間で展開される愛の試練。その過程で、夫婦の絆が試され、価値観が揺さぶられ、鑑賞後にも感情を引きずってしまうような一作。おすすめですね。

 

 

監督  フルール・フォーチュン

公開  2025年

制作国 ドイツ

時間  114分

出演  エリザベス・オルセン

    アリシア・ヴィカンダー

    ヒメーシュ・パテル など