最近アマゾンプライムで公開されていた2023年の歴史・ドラマ映画「関心領域」のポイントと感想・評価を書いています。ネタバレもあるので注意してください。
2024年のアカデミー賞の国際長編映画賞、音響賞の二冠。アウシュヴィッツ強制収容所の隣に住む家族の話。
あらすじ
ルドルフ・ヘス所長はアウシュヴィッツ強制収容所の隣に新居を建て、妻・ヘート・ヴィヒと子ども達との幸せの生活を送っているが・・・
ポイント 幸福の横にある地獄
最初、アウシュヴィッツ強制収容所に隣接する家での家族の平和で幸せな風景が映し出される。
しかし、裏にはナチスの凶悪の思想や戦争の影が色濃く存在している。序盤、普通の家族のすぐ隣には「パーン」という乾いた銃の音や、収容所が少し見えているのだ。
これが、何故か直接見せつけられるよりも怖い。
一番印象に残ったのは妻ヘートヴィヒが母を連れて、庭を案内する場面。
鮮やかに手入れされた広い優雅な庭を30秒ほど、二人が話ながら歩く。
カメラは二人より遠くから捉える、その奥にはアウシュヴィッツ強制収容所の建物があきらかな存在感を放って大きく見えるのだ。
平和な日常の横には、異様な収容所が奥に見えるというだけで、違和感と恐怖感を煽る演出は斬新。(そしてヘートヴィヒが強制収容所を気にせず生活しているように見えるのも恐ろしいさを倍増させる要因)
その後に、マリーゴールドやひまわりなどの花がアップで何枚か映った後、真っ赤の画面と嫌な音が続く。監督の意志が入った綺麗さと恐怖感を合わせる映像が独創的だった。
まとめ
本作「関心領域」はアウシュヴィッツ強制収容所の恐ろしさを直接ではなく、不安な音や遠くの収容所で現わす異物で不気味な演出が光る作品。
直接的暴力シーンを使わずに表す恐怖の表現がすごいアイデアだと感じた。
また人物の表情のアップがほとんどないなど、人物への感情移入を拒む撮り方だった。(まるで強制収容所の存在感こそが主人公みたい)
そして最後の場面が大きく変わる場面が監督の戦争へのメッセージを伝えている場面だと思った。
徐々にアウシュヴィッツのユダヤ人の叫び声、銃声の連続音が響く音が多く大きくなる恐怖感の演出は特別。
監督 ジョナサン・グレイザー
公開 2023年
時間 105分
ザンドラ・ヒュラー など